Kenwood TS-690でAH4使ってみた(TC-AH4 V3使用)

TC-AH4

Kenwoodさんの少し古いリグ「TS-690」でAH4を利用してみました。まずは「TC-AH4 V3」のユーザーコマンドを利用します。コマンドの記述は下記のイメージです。
<<他リグでテストされてみたい方はVectorさんで「TC-AH4/SD-CNT コマンド
マクロ動作確認アプリ」としてダウンロード可能です。
(目下Ver1.1への変更差し替え依頼中ですが・・・)
「https://www.vector.co.jp/soft/winnt/home/se523439.html」です。

1:現在のモード
この頃のリグはまだMDコマンドが書き込みしか対応ありませんので、「IF」コマンドを利用して読み出します。IFコマンドを送信すると帰ってくる応答で29文字目に1文字で1~9で表される現在のモードがわかります。これを利用して「IF<5+29,1=IF>」としてIFコマンドを送信、応答の待機時間は0.5秒として、応答の先頭が「IF」で始まる文字列の29文字目から1文字を現在のモードとして記憶します。またここではケンウッドさんのリグの場合個々の装置の電源投入によってリグが最初になった場合等、TC-AH4起動でシリアル通信に電源投入による送信レベルの変化でリグはゴミを受信してしまい、正規に送信したコマンドの前にゴミがあるため解釈できずに「?」を返す場合が多々あります。この為モード読出しに先立って「ID」コマンドを送信して正規のIDが応答されても、ゴミで「?」が帰ってきてもつぎのIFが正常に受信されるようにゴミ掃除のためダミーコマンドを送信しておきます。書式は「ID;IF<5+29,1=IF>」となります。

2:キャリア出力のモードに切り替え
モードの設定はできますので、「MD」コマンドでFSKに切り替えます。ユーザーコマンドの書式は「MD6<5>」として「MD6」と送信して0.5秒待機しています。個々での待機は別に0.5秒ではなくて、もっと早くても問題ありません・・・0.1秒でも0秒でも多分OKかと。

3:現在の出力
現状での出力を記憶しておきたいところですが、TS-690では出力の読出・書込がサポートされていません。このためここでは処理をパスしておきます。「!2」として処理のパスとここでの待機時間0.2秒を指示しています。ここも0秒でもOKかと思われます。

4:チューニングでの出力設定
ここもTS-690ではサポートされていませんのでパスです「!2」を設定しておきます。ここも0.2秒も0秒でもOKかと思われます。チューニングでの高周波出力は後述の拡張基板でのALC電圧(負電圧出力)を利用してチューニング中は出力を低減します。

5:現在周波数の読出し
TC-AH4へチューニング時の周波数を表示するためここで読み出しておきます。コマンド「IF」を利用して応答の「IF」文字以降に送られてくる周波数情報を記憶しておきます。ユーザーコマンドの書式は「IF<5+5,5=IF>」として応答文字列(IFを含む)の先頭から5番目文字から5文字(**.***MHz)を指定します。ここでの処理の待機時間は0.5秒ほど指示しています。この時間は応答が送られてくるまでの十分な時間を指定しておいてください。

6:送信の実行
実際にキャリアを出力します。コマンドは「TX」コマンドを利用します。ただ、次の行(SWR値の読出し・・・AT-100等でのボタン操作のみでチューニングする場合)でTSー690におきましてはTSー480等と違ってメーター切り替えが必要の様です。TSー480では「RM」コマンドを送信すると「RM1XXXX;RM2XXXX;RM3XXXX;」と連続しておくってきたのですが、TSー690では現在の表示メータのみ応答してきます。この為送信に先立ってメーターを切り替えるために「RM1」コマンドを設定しておきます(AH4動作としてリグのSWR値から終了を検出しない場合は不要です)。書式は「RM1;TX<2>」としておきます。TC-AH4内部では「<」以前のすべての文字を送信文字列と解釈して最後にターミネーター「;」を送信します。この為上記の記述では2つもコマンドが送信されます。

7:SWR値の読出し
ここの処理はボタンモードでの処理でAH4動作ではTC-AH4の内部でパスされます。よって「!0」等のダミーを記述しておいてもOKですが、一応TSー690でもSWR値読出しはサポートされていますので記述しておきます。メーター切り替えは終わっていますので「RM」コマンドを送信することで応答は「RM1XXXX(XXXXは0000~0030)」とSWR値が返されてきます。書式は「RM<5+3,4=RM1>」として応答文字列の先頭がRM1と一致する応答文字列の先頭文字3文字目から4文字(XXXXの部分を取得するように記述します。もちろん応答は0~30なので、ここでの設定を「RM<5+5,2=RM1>」としてもOKです。またここでの処理の0.5秒はSWRが下がって安定した事を検出してからの0.5秒になります。ここももう安定は確認できていますから0設定でも多分動作すると思います(RM<0+3,4=RM1>)。

8:受信への移行
チューニングの処理はチューナーで完了しましたので、受信に移行します。コマンドは「RX」コマンドで書式は「RX<2>」としています。ここでのコマンド送信後の待機時間も適当に可能な範囲で縮めてもらってOKです。

9:出力の復元
ここでチューニング用に設定した出力を元の設定に戻しますが、TS-690ではコマンドサポートされていませんのでここの処理もパスしておきます。書式は「!0]としてみました。実際の処理は拡張ボードでのALC電圧の解放になりますので、TC-AH4の処理が完了しましたら、拡張信号(黄色と茶色の線)はオープンになり拡張ボードは待機状態としてALC電圧は0Vになります。

10:モードの復元
最後に元の運用モードにここで最初未記憶しておいた文字列を送信して戻します。書式は「MD<5>」としておけばTC-AH4内部で左記に記憶したモード文字列を添えて送信します。

11:SWRの安定検出パラメータとターミネータの設定
最後にリグのSWR値でチューニングの完了を検出するためのパラメータ2つとターミネータ(コマンドの最後に送信する文字を設定しておきます。TC-AH4denoAH4動作(チューナーのKEY信号で完了を検出する場合はSWRパラメータ2つは適当な値でOKです。このパラメータを使用する処理は内部でパスされますので・・・。SWR値でSWRが低下・安定した事を実行する場合はここのパラメータ1、パラメータ2を設定しておきます。パラメータ1はこの値以下になれば運用可能であろう範囲としての値です。ここの値は内部でSWR値を10回取得してその合計が設定値以下であれば後は取得値が安定するのを待つ意味で、概ねSWR2.5の応答値の10回分(TS690では0~30フルスケールなのでおそらくSWR3が中央付近の15、SWR2.5は12くらい??(実際の値はかくにんしていませんが)の10培地をパラメータ1とすればいいと思います。ここでは適当なので180を設定しています。パラメータ2は10回SWR値を取得した際の前の値との差の合計がこの設定値以下になればほぼ安定ではないかという意味です。1回目の値と2回目の値の差が2あって、2回目と3回目の差が3・・・が繰り返しふらふらした場合は2*5+3*4=22と計算されますので、ここでは30と設定しています(適当です・・AH4動作なので)。最後の文字はターミネート文字で八重洲さん・ケンウッドさんともに概ね「;(セミコロン)」になています。書式は「180,30,;」になります。

実機でのテスト
下記の動画イメージです。念のため送信出力絞っておいて、「UserCmdTester」でユーザーコマンドの行を選択して「選択行実行」ボタンで確認して行きます。1行目の実行では応答文字を取り出し「モード記憶文字列」に現在モードの文字が格納されます。他の行も同様に処理される事がわかると思います。
ここまでのテストはTC-AH4無しでもTSー690のシリアルインターフェースさえできればパソコンのシリアルポートからUserCmdTesterを利用して可能です。Vectorからダウンロードしてください(https://www.vector.co.jp/soft/winnt/home/se523439.html)。

調整用の出力設定(ALC電圧の決定)
下記のイメージでリグにALC電圧をかけて出力を低減させます。拡張基板にDC12V(緑2P端子)、TC-AH4接続(緑4P端子)、リグへのALC電圧(青2P端子)です。リグは裏面のREMOTEコネクタの6番ピンとコネクタ外枠です。下記イメージ動作の様にTC-AH4のチューニング中外部出力の端子を短絡してALC電圧を発生させます。リグを送信状態(出力のVRは最大)にして拡張基板の中央半固定抵抗を回して、リグ出力が5W~10W程度になるように設定すればOKです。


実際の動作
最後にTC-AH4のジャンパーをユーザーコマンド動作・AH4動作の0x30にして、実行してみます。各バンドでCWでキャリア送信(SWR高)>チューニング実行>再度送信(SWR低)です。

最後に・・通信に際して
TSー690でのシリアル通信はTSー480の様にRS232Cレベルではありませんでした。ケンウッドさんの「IF-232C」なるインターフェースを利用してRS232Cレベルに変換するようですが、おそらくこのインターフェースはもう入手不可かと・・・。で、とりあえずは上記の拡張基板の左にある手組の基板がインターフェースしています。PC直接でも確認したかったので、TSー690のTTLレベルとRS232Cを変換していますが、「TC-AH4 V3」でのTTLレベルコネクタ(内部CN-TTL)を利用すればTC-74HC00とかでTTLの論理変換(反転)をすればOKです。参考までにその回路ですが下記に掲載しておきます。

インターフェース回路です
TSー690内部回路ですコネクターはDin6ピンタイプです(差し込みはリグ左側面)


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